photo: Mizuho Takamura
text: Takehiko Nakanisihi
現役経営者の卒業生がキャンパスに訪れ、
当時から現在までを振り返る連載企画がスタートします。
第1回は、ニッチかつユニークなものづくりで、海外市場の開拓に成功した「キャニコム」の三代目社長です。
キャニコム
帝京大学法学部卒業
キャニコム
代表取締役社長
包行 かねゆき 良光 よしみつ さん
所在地 | [本社] 〒839-1396 福岡県うきは市吉井町福益90-1 [工場] 〒839-1343 福岡県うきは市吉井町鷹取 1025-1 |
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キャッチコピー | ものづくりは演歌だ! |
プロフィール | 帝京大学法学部2002年3月卒業。大手小売企業で農業資材の拡販に従事した後、キャニコムに2004年3月入社。2006年より単身で渡米し、CANYCOM USAの社長として市場を開拓。2008年4月からグローバル?マーケティング本部長として国内外で陣頭指揮を執り、2009年6月取締役に就任。2015年1月より現職。 |
乗用草刈機や林内作業車などにおいて、他の追随を許さない製品群と、ユニークな取り組みで注目を浴びる株式会社筑水キャニコム。現在社長を務める包行良光さんが、祖父である創業者から海外事業の立て直しを託されたのは、社会人となって3年目だった。
大学時代に水泳部で鍛えられた不屈の精神と、困難を笑って跳ねのける天性の明るさで、北米を皮切りに海外市場を切り拓いていく。現地の地域産業に特化したものづくりを推進し、当初は5%程度だった海外の売上比率を、現在の60%近くまで引き上げた。
「卒業しても、いくつになっても、勉強ですよ」と話す包行さんは、リスキリングの実践者である。2015年の社長就任前には大学院に進学し、MBA(経営学修士)を取得。ニッポンが誇る“小さな大企業”を選出するForbes JAPAN主催の『SMALL GIANTS AWARD 2022-2023』でグランプリを受賞し、経営手腕が高く評価されている先輩に、大学時代から現在に至る道のりを語ってもらった。
大学生活は波乱のスタートでした。家業が経営難の時期と重なり、新聞奨学生制度を活用しながら大学に通いました。
4年間を通して全力を注いだのは、水泳部の活動。私は怖いもの知らずの性格で、泳げないにもかかわらず勧誘されて入部しましたが、最終的には個人メドレーの選手で大会に出場するほど頑張りました。
社員にも「時間を忘れて打ち込めることを見つけなさい」とよく話します。余計なことを考える暇があると、考えすぎて不安になり、自信まで失ってしまう。勉強もスポーツと同じです。のめり込める関心事を見つけ、夢中になって勉強すれば自信がつき、ついた自信が次のアクションを生む。その繰り返しが経験やキャリアという貴重な財産になるはずです。
卒業後は大手ホームセンターに就職しました。社会人としての修行時代で、自らチャンスを創り出して実力を磨き、自分の意見を持つために必死でした。そして3年目を迎えたとき、海外事業を立て直すために家業を継承しました。ただ、引き継ぐからには業績でトップにならなければと思い、単身で6年間アメリカに駐在し、いつの間にかグローバル市場を開拓していたというのが実感です。
ものづくりに邁進しているのはユーザーとなるお客様を支えるためですが、続けるにつれ働く社員を大切にしたい気持ちも膨らんでいきました。自分のキャリア志向がわからずに悩む学生のみなさんは、「誰のために働きたいか」を考えることも、キャリア志向を明確にしていく方法の一つだと思います。
農業用機械を例に挙げれば、国内市場は衰退を続けています。就業者の減少や農法の進化が主な要因です。将来を見据え、国外でも活躍できる人材を輩出していくため、社長就任後は海外に向けて経営の舵を切りました。一方で、東南アジアの作物を温暖化が進む日本各地で栽培するなど、国内市場の回復にもつながる面白い農業の支援も始めています。今後は世界で活躍できる人材育成にも注力していくつもりです。
社長を務めて実感したのは、立場が人を育てるということです。どんな原石でも磨けば光ります。そして、人は人でしか磨けません。ぜひ学生時代からリーダーシップが問われる立場を経験してください。人間的にも大きく成長できることは間違いありません。
1948年に包行農具製作所として創業。産業機械(農業用、建設用、林業用等)や不整地運搬車の製造?販売を手掛ける国内大手メーカー。2006年より北米を皮切りに海外にも進出し、国内13拠点?世界53ヵ国で事業を展開(2022年度現在)。『ビジョン300(売上100億、取引100ヵ国、100年企業)』を掲げ、高い国際競争力をもつ“グローバル中小企業”をめざす。
ひさしぶりに訪れた母校。新旧の建物が入り混じるキャンパスを先輩がさんぽ。
通学時に使っていたのは南門。
心臓破りの坂も昔のまま。
キャンパスを歩きながら、段々と当時のことを思い出す。
蔦友館の学食を訪問。「ひさしぶりに食べたくなりますね」
恩師との再会で話に花が咲く。
「またゆっくり会いに来ます!」
懐かしのプール。「この景色と屋内の暑さ、全然変わってない!」
キャンパスを後にする先輩。「充実した時間になりました!」
在学当時にはなかった、八王子キャンパスの新しい施設を訪問。
ソラティオスクエを見上げる。「存在感がすごいですね」
「こんな景色が広がっているなんて、はじめて知りました」
法学部だった先輩。「いまはこんな設備が整ってるんですね」
キュリオシティホールを初訪問。「とても立派で驚きました」
1948年に包行農具製作所として創業。産業機械(農業用、建設用、林業用等)や不整地運搬車の製造?販売を手掛ける国内大手メーカー。2006年より北米を皮切りに海外にも進出し、国内13拠点?世界53ヵ国で事業を展開(2022年度現在)。『ビジョン300(売上100億、取引100ヵ国、100年企業)』を掲げ、高い国際競争力をもつ“グローバル中小企業”をめざす。