プロ野球選手をめざして、子どものころからずっと野球をやってきました。ポジションはピッチャーです。高校2年生の時には、在籍していた佐賀北高校野球部が甲子園で優勝! 私は控え選手だったのですが、ものすごくうれしかったですね。でも、その後試合で投げた時に、肩をケガしてしまい、その時点でプロ入りは諦めざるを得ませんでした。
それでも何かしらの形で野球にかかわりたいという思いがありました。その時、一番身近にいてくれたのが、私のリハビリを担当してくれたフィジカルセラピストの先生だったんです。以前にライオンズのスタッフとして勤務されていたこともあると聞いて、この仕事に興味をもつように。その先生に帝京大学の福岡医療技術学部を薦められ、進学を決めました。
大学でまず取り組むのは、解剖学や運動学などの座学。これが非常に奥が深くて、難しくって…。でも、実際の治療をするにあたっては必ず必要になる知識なので、自分を奮い立たせて勉強しました。一方で、1?2年生のうちは軟式野球サークルにも入って、息抜きがてらに楽しんでいましたね。3年生になると実習が始まって忙しくなったこともあり、サークル活動を卒業して勉強に集中するようになりました。
就職活動では、もちろんすぐにでもプロ球団のスタッフになりたかったのですが、新卒の学生を採用するところはまずなくて。はじめは大学の実習でもお世話になった、地元?佐賀にある整形外科に就職しました。その後関東に拠点を移し、スポーツクリニックに転職。そこで勤務しながら、休みの日は大学体育会系運動部のメディカルトレーナーとしても活動することで、経験を積んでいきました。
そんななか、社会人生活10年目の時に、ライオンズが経験者採用をしていることを知ったんです。このチャンスを逃すわけにはいかない、と応募。合格の連絡をもらった時は、心の底からうれしかったですね。2023年の1月に入社して、当初はリハビリ中の選手のケアを担当。2024年の1月に、一軍選手のフィジカルセラピストになりました。まだまだ勉強中ではありますが、チームの勝利に貢献できているという大きなやりがいを感じています。
今年の球団方針は「常勝軍団再建」。この目標を達成するために、全員が同じ方向を向いて日々努力を続けています。スタッフは皆、明るいキャラクターの人が多いですね。そのうえで、それぞれの業務に責任をもって取り組んでいる点が、この組織の魅力だと思います。入社当初は不安もありましたが、選手とかかわりながらチーム一丸となってともに戦うことができるこの仕事が大好きです。
プロ野球選手は、ドラフトという狭き門をくぐり抜けてきた存在。時にはケガなどで本来の力を発揮できず、不本意なリハビリ期間を過ごすこともあります。フィジカルセラピストは、そんな選手に寄り添い、復帰までのサポートをするのが役目。辛い期間を知っている分、その選手が再び試合で活躍する姿を目の当たりにした時の喜びはひとしおです。
選手や患者の不具合は「絶対治す」という強い気持ちを持ち、日々学び、振り返りながらアプローチを続けているという重松さん。
「自分が一番やりたいことをできる職場」をテーマに仕事を探しました。新卒では、スポーツ選手が多く来院する整形外科に就職。その後、別のスポーツ系クリニックで経験を積み、ライオンズ入りを志願しました。面接では、特に多くの症例を見てきた肩?肘の疾患に関する実績をアピール。実技試験でも、そんな自分の持ち味が伝わるよう工夫しました。
モデル患者を想定して、ケーススタディ形式の実技試験を実施。正解を答えられるかよりも、論理的に考察し、自分なりの答えを導き出せるかを重要視しています。また球団内にはスタッフも含めて、20代から60代まで年代が幅広いので、臆することなくやりとりできるコミュニケーション能力も重要。先読みして準備できるかという、段取り力も重視しています。
ここまでじっくり自分自身と向き合う時間は初めてでした。その過程で、自分の長所や短所もしっかりと理解できたからこそ、いかに苦手を克服し、得意をさらに伸ばしていくかについて考えることができました。あと、僕はもともと人と話すのがあまり上手な方ではなかったのですが、セラピストにとって会話は必須項目。コミュニケーション能力を伸ばす良い機会にもなりました。
就職活動中は辛いことも多いかもしれませんが、重要なのは「夢を諦めないこと」。ライオンズでは基本的に新卒学生の採用を行っていないので、クリニックや実業団チーム、独立リーグなどで経験を積んだ後に入社してくる人がほとんどです。長い目で今後のキャリアプランを見据えれば、自分の未来によりわくわくしながら、充実した就活期間を過ごすことができると思いますよ。
良いセラピストとは、選手や患者さんのことを第一に考えられる人。「この人を治すんだ!」という、強い想いが不可欠です。そのうえで、自分なりのアプローチをしていくことが重要。時には思ったような結果が出ないこともありますが、そんな時は、うまくいかなかった理由をきちんと考察する。上司や同僚の意見も取り入れつつ、一緒に戦っていける人に仲間になってほしいですね。
選手のキャラクターやフィジカルコンディションは、実にさまざま。セラピストには、視野を広くもち、周囲の意見も参考にしながら、柔軟にアプローチする能力が求められます。また我々は、第一線で活躍する選手たちを陰で支える、縁の下の力もち的存在。「自分のことよりまず選手」という、献身的な姿勢で仕事に向き合える方が向いていると思います。