本研究室では、植物が病虫害などのさまざまな環境ストレスから身を守る仕組みについて研究を行っています。植物が病原菌の感染などを認識すると、さまざまな植物ホルモンを介したシグナル伝達や転写因子群による下流標的遺伝子の転写活性化などを経て、防御応答が引き起こされます。このような誘導メカニズムを明らかにするために、イネを主な研究材料として、環境ストレス応答に関与する植物ホルモンや転写因子群の機能の解明を行っています。また、植物は環境ストレスに応答してさまざまな二次代謝産物を蓄積します。このような二次代謝産物の生合成経路や機能についても研究を行っています。
教員名?所属 | 宮本皓司 / 理工学部バイオサイエンス学科 |
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専門分野 | 植物化学?植物バイオテクノロジー |
研究テーマ | 環境ストレスに対する植物の防御応答メカニズムの解明 |
研究キーワード? | 病害応答、植物ホルモン、二次代謝、転写因子、生合成 |
教員紹介URL?? ? | https://www3.med.teikyo-u.ac.jp/profile/ja.defc53ed9c5aa98d.html |
植物の病害抵抗性反応の誘導には、さまざまな植物ホルモンがかかわっています。これまでにジャスモン酸やサリチル酸といった植物ホルモンが病害抵抗性反応を誘導する重要なシグナル物質であることが知られています。一方、サイトカイニンは作物の多収性にかかわる植物ホルモンですが、病害抵抗性反応への関与は明らかになっていませんでした。これまでに、サイトカイニンおよびジャスモン酸の両方を欠損するイネをゲノム編集により作出し、このイネではいもち病菌に対する抵抗性が著しく低下することを明らかにしました。このことから、イネのいもち病菌に対する抵抗性においては、ジャスモン酸とサイトカイニンが協調して重要な役割を担っていると考えられます。
植物ホルモンであるジャスモン酸は伸長の抑制、老化、雄性生殖器官の形成といった植物の生長、発達にかかわるだけでなく、植物のストレス応答にも関与することが知られています。植物ホルモンは、受容体と呼ばれるタンパク質と結合することで、さまざまな生理機能を発揮します。イネはジャスモン酸受容体をコードする遺伝子を3つ持っていますが、それぞれの機能については明らかになっていませんでした。現在、イネのジャスモン酸受容体の機能を明らかにするため、それぞれの受容体の変異株を作製し、その表現型の解析を行っています。
植物は病原菌の感染から身を守るためにさまざまな抗菌性二次代謝産物を生産することが知られています。このような植物が生産する抗菌性物質をファイトアレキシンと総称します。イネはモミラクトン、ファイトカサン、サクラネチンといったさまざまなファイトアレキシンを生産します。これまで、イネが病原菌の感染に応答して、どのようにファイトアレキシンの生産を誘導するのかを解明するため、ファイトアレキシンの生合成遺伝子の転写制御機構の解明に取り組んできました。現在までにさまざまな転写因子がファイトアレキシン生合成遺伝子の転写を誘導または抑制し、ファイトアレキシンの生産をコントロールしていることが明らかになっています。
題名 | 雑誌名 | 研究室 | 内容 |
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Chemical and genetic carotenoid deficiency delays growth in dark-grown Euglena gracilis | Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 87(5):491-500,? | 植物分子細胞学研究室?植物化学研究室 | 詳細 |
題名 | 雑誌名 | 研究室 | 内容 |
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ジャスモン酸の病傷害応答におけるシグナル伝達に関する研究 | 植物の??調節、57巻1号 | 植物化学研究室 | 詳細 |
題名 | 雑誌名 | 研究室 | 内容 |
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Deciphering OPDA signaling components in the momilactone-producing moss Calohypnum plumiforme | Frontiers in Plant Science 12:688565. doi: 10.3389/fpls.2021.688565 | 植物化学研究室、有機構造化学研究室、先端機器分析センター | 詳細 |
Functional kaurene-synthase-like diterpene synthases lacking a gamma domain are widely present in Oryza and related species | Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 85 (9), 1945-1952 | 植物化学研究室 | 詳細 |
The rice wound-inducible transcription factor RERJ1 sharing same signal transduction pathway with OsMYC2 is necessary for defense response to herbivory and bacterial blight | Plant Molecular Biology | 植物化学研究室 | 詳細 |
Chitooligosaccharide elicitor and oxylipins synergistically elevate phytoalexin production in rice | Plant Molecular Biology | 植物化学研究室、有機構造化学研究室、先端機器分析センター | 詳細 |
Unique localization of jasmonic acid-related compounds in developing Phaseolus vulgaris L. (common bean) seeds revealed through desorption electrospray ionization-mass spectrometry imaging | Phytochemistry, 188, 112812, 2021 | 食品分析学研究室、植物化学研究室 | 詳細 |
題名 | 雑誌名 | 研究室 | 内容 |
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Genomic evidence for convergent evolution of gene clusters for momilactone biosynthesis in land plants | Proceedings of the National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀要) | 植物化学研究室 | 詳細 |
Cytokinins affect the akinete-germination stage of a terrestrial filamentous cyanobacterium, Nostoc sp. HK-01 | Plant Growth Regulation: 92, pages273–282 | 植物化学研究室 | 詳細 |
題名 | 雑誌名 | 研究室 | 内容 |
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Facile preparation of optically active jasmonates and their biological activities in rice | Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 45, 876-881, 2019 | 有機構造化学研究室、植物化学研究室 | 詳細 |
PUB4, a CERK1-Interacting Ubiquitin Ligase, Positively Regulates MAMP-Triggered Immunity in Arabidopsis | Plant and Cell Physiology, 60:2573-2583 | 植物化学研究室 | 詳細 |
題名 | 雑誌名 | 研究室 | 内容 |
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Distribution analysis of anthocyanins, sugars, and organic acids in strawberry fruits using matrix-assisted laser desorption/ionization-imaging mass spectrometry | Journal of Agricultural and Food Chemistry | 食品分析学研究室、植物化学研究室 | 詳細 |
Characterization of diterpene synthase genes in the wild rice species Oryza brachyatha provides evolutionary insightinto rice phytoalexin biosynthesis | Biochemical and Biophysical Research Communications, 503:1221-1227 | 植物化学研究室 | 詳細 |
演題名 | 学会名 | 研究室 | 内容 |
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麻酔処理による傷害応答及び接ぎ木接着に対する影響 | 日本植物学会第87回大会 | 植物生理学研究室?植物化学研究室 | 詳細 |
先生方が日々取り組んでいる研究について、どのようなきっかけで取り組むようになったのか、その研究はどのような形で社会に生かされていくのかなど、研究室紹介だけでは紹介しきれない内容や、普段なかなか知ることのできない先生方の研究に対する熱い思いなどをご紹介します。